襲撃

　先日、僕は友人と共に花見と称して鎌倉へと繰り出していた。
　特に鎌倉に詳しいわけでもない僕達は、桜の名所として有名な所に適当に買った弁当を携えて訪れた。
　幸い人出はそう多くなく、難なく良い場所のベンチを占領して酒を片手にのんびりと花見を始めた。

　天気も良く穏やかな春を満喫し、酒と握り飯、寿司、サンドウィッチと炭水化物全開の食事を貪っていたその時だった。

ぶわごぅ！

　無理やり言語化するのならば、こんな音が僕の顔の真横を一瞬で通り過ぎた。その爆風は僕の横にいた友人をも驚嘆させた。
　衝撃はから一瞬遅れて、僕はサンドウィッチを手にしていた左手の人差し指に何かにぶつけたような感触を覚え始めていた。

　そして漸く事態を悟る。

トンビに襲われてサンドウィッチ盗られた

　話には聞いていましたが、体験したのは初めてです。

　それにしても僕には一切怪我をさせず、的確に食べ物だけを持ち去ったその手腕は賞賛に値する。と、ひとしきり感心してしまいました。

　まるで鬼平犯科帖の盗賊みたいで格好良い気すらします。
　そんなトンビですが、ふと空を見上げると、

カラスに追い回されてピキャア！と悲鳴を上げて
いました。

　猛禽類の癖に、害鳥一羽撃退するのも困難なようです。