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2006年春に神主を辞め、某弱小会社に入社するも、たったの10ヶ月で鬱病になり2007年3月で退職。半年の休養を経て現在は営業事務としてある業界では有名な会社で正社員として働いています。元神主だったので、それに纏わる忌まわしいネタも公開しつつ、有難さ-127%でお送り致します。
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 僕の同居人である桜文鳥が昨夜から少し具合が悪そうだと思っていた。今朝になって更に具合が悪そうで、止まり木から降りて地面に座っていた。
 推定でも10歳は超えているのだから、既に平均寿命は過ぎている。足腰も弱ってきていたので、その時がいつ来るのかと思っていた。一昨年に亡くなった雀は地面の上で生活している期間が数年単位であったので、枝に止まれないからと言ってすぐには死なないのではとも思っていた。
 でも朝の様子を見て、ハロゲンヒーターで暖めながら「今日が最期なのだ、きっと僕が仕事から帰って来る前に逝ってしまう」と確信していた。多くの死に立ち会った訳でもないのに、分かってしまった。
 出掛ける間際までその暖かい羽毛に触れながら、無理な願いかも知れないが僕が戻るまで生きていてくれと思った。
 
 会社に行ってからもずっと気になった。今この瞬間に死んでいるのではないか。1時間程の休憩時間、ぎりぎりで家まで往復出来る。家にいられる時間は10分くらいしかないが、例え既に冷たくなっているかも知れないと思っても、一縷の望みにかけて急いで帰宅した。
 冷たい塊になっている事を覚悟して部屋に入ると、辛うじてまだ息があった。小さく鳴く声も聞こえた。
 そっと抱き上げて両手で包み、いつものように、昨日もそうしていたように背中に口を付けた。いつもなら暖かく柔らかい感触なのに、既に命がないかのように冷たい感触だった。ああ、もう君は逝ってしまうのか。
 僕はその時に傍にいてあげる事も出来ないのか。
 今からでも病院に行けば助かるのだろうか?
 鳥を診られる獣医師は意外に少ない。僕の家の近所にはない。普通の獣医に診せても分からない事も少なくないという。どの道老体だからどうしようもないのだろう。
 寿命とて数日延びる程度かも知れない。
 とても別れ難いけれど、冷たい羽毛から離れて会社に戻る。また帰宅するまで生きていてくれと思いながら、普段はしないけれど「行ってくるよ!」と声をかけて部屋を出た。

 仕事に戻ってからもずっと気になって仕方がなかった。今しも死んでしまうのではないかと思いながら、15分程残業して家に向かった。きっともう生きていない。
 深夜には凍てつく冷たい土に、君を埋葬しなくてはならないのか。そんな事を考えてしまい、自転車を漕ぎながらもじわじわと涙が浮かぶ。ぎりぎり零れはしないけれど、街灯が滲んで見えた。暗いからいいけれど明るかったら目が赤くなっているのが他人にも分かっただろう。
 出来るだけ急いで帰宅した。

 矢張り間に合わなかった。父親によると砂糖水をあげたりしたらしいが、僕が戻る少し前に息を引き取ったという。残業しなければ間に合ったのかどうか、細かい時間は敢えて聞かなかった。
 静かに目を綴じている彼に触れると、まだ暖かかったが硬くなり始めていた。ああ、君はもういないのか。
 昨日の朝は僕の手に乗り求愛の歌を歌い、元気に飛んでいたというのに。天命とはいえ僕を置いて逝ってしまったのか。無表情のままに涙が頬を伝う。こんなに悲しいのに何故僕の心臓は変わらず動いているのか。君の死と同時に止まってしまえば良かったのに。
 今まで生きてきてこんなに悲しいのは初めてだ。酒で誤魔化す事もせず、夕飯も食べずに涙を流し続けて今に至る。声を上げはしないが涙は時折収まったりしつつ、ずっと流れている。ただこの悲しみをかみ締めて。
 彼の嘴も足もすっかり黒ずんでしまった。生命の欠片も消え失せ、本当に死んでしまったのだ。

 たかが鳥と他人は思うのだろう。でも僕にとっては何にも変えがたい存在だった。全ての生命は同等だと思う。しかし実際は個々人によって大事な命とそうでない命に別れる。その基準はそれぞれの命に対する思い入れや関わりの深さ、絆なのだろう。
 だから見ず知らずの他人が何万人と死んだ所で、別に悲しみはない。でも深く思い、関わり、絆を深めていれば小鳥一羽の命の価値は計り知れないものとなる。
 彼が僕をどう思っていたかは知る由もないが、彼は僕にとって大事な存在だったのだ。

 今日一晩は同じ部屋で過ごし、通夜代わりとしよう。明日も仕事だから出掛ける前に、庭に彼を葬ろう。紫陽花の下がいいだろうか? 明朝も泣きながら埋めるのだろうか? 今も泣いたままだから、赤く腫れた目で会社に行く事になるかも知れない。仕事中に泣いたらどうしよう。何か気を紛らわせる事を考えて我慢しよう。
 
 耐え難い悲しみの只中にあっても、君に会えて一緒にいられた事がとても幸福な事だったのだと思う。こんなに悲しいなら会わなければ良かったなどとは微塵も思わない。そう遠くない時期にいずれ別離の時が来ると分かっていても、共にいられて本当に良かった。
 今日と明日は泣いて過ごしてしまうと思うけど、それよりも遥かに長い時間の幸福を有難う。偶然だろうけど僕の誕生日に僕を泣かせないでくれたんだね。別に誕生日を楽しみになんてしていないけれど、その時を外して逝ってくれて良かったよ。まるで1週間先伸ばししてくれたみたいに思えるよ。
 
 君の死を嘆き、君の水入れを満たす程に涙を流しても、涙は尽きない。同じ生き物ですらなかったし、言葉も交わせず、心も全く違うものだったかも知れないが、君は僕の親友だった。家族よりも大事だ。
 今日まで本当に幸福を有難う。君も少しでもそうであってくれたら僕も嬉しい。今日一晩で最期だ。明日の朝、永久に別れを。
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プロフィール
HN:
榊原恭一郎
性別:
男性
職業:
営業事務
趣味:
読書、DVD鑑賞、SD、ネット等インドア趣味
自己紹介:
大卒後神主×年→無職2ヶ月→会社員10ヶ月→鬱病になって療養しつつ無職6ヶ月→念願の事務職に就職。
2回連続問題ありで離職率の高い職場を選んで体を壊しているので、次こそはマトモな所を狙って就職活動したつもりです。超アナログではあるけど居心地は悪くないと思う。
 夢は経理事務だったけど営業事務職、年収300万以上を夢見た結果、その夢は叶う職場(のはず)です。求人票に嘘がなければね。

 そんな駄目人間風味のコーヒー飲まないスターバックスファンのブログ。スタバグッズ蒐集が趣味。他にも色々集めてます。
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