去り際の美学、立つ鳥後を濁さず

　今の会社で勤め先としては３つ目になり、社会人経験も四捨五入すれば１０年になる僕。自らの退職はバイトも含めれば３回を数え、逆に送り出す側となった事も何度もあります。
　大学の時にやっていたバイトは約４年間勤め上げた事もあり、非常に円満に送り出して頂だきました。先輩方も単位がヤバイからと卒業まで続けられない方もいましたが、辞める時は皆さん問題なく辞めていき、その後はたまに顔を出してくれたり………とそれはそれは穏やかなものでした。

　バイトをしてはいたけど社会人ではなかったあの頃を経て、大学卒業と共に神社へ身を投じた訳ですが、こちらでは退職する人＝ほぼ巫女さんでした。神職では僕の先輩が結婚して実家を継ぐからと円満に退職して行っただけで、あとは僕だけ。僕が辞める際にも神社の規則に従い、退職の約１年前に退職を告げました。普通はこんなに早い段階で告げる事はあんまりないようです。法律では２週間前だし、引継ぎを考えても２～３ヶ月前で十分なはずなのですが、まあ規則だったんです。問題点としては１年も前に辞めるのが決まっているので、モチベーションが上がらない事。
　これで最後だから熱心にメモを取ってもな………、とか他の職員さんからも今年で辞めるんだから教えてもな………という微妙な空気になったまま長い時間を過ごすのが変に気を遣って疲れました。
　ついでに退職まで長い時間があるので、頻繁に引き止めようとされるのが厭だった。心は決まっているのに。

　で、巫女さん達はと言うと、殆どが非円満退職だった感じです。神職と付き合って別れ話で揉めて、精神的に病んでしまい長期欠勤。とうとう入院までする程悪化し、親御さんが神社に乗り込んできてそのまま本人不在のまま退職。
　他の巫女さんとうまくやれずに正月直前という最悪のタイミングで辞めようとしたけど流石に認められず、欠勤しまくりながら年度末までいた人。
　彼氏（神主じゃないですよ）に振られて立ち直れない、仕事なんて行けないと出社拒否し、お母様が謝罪に来てこれまた本人がいないまま退職決定。
　入社２ヶ月程経ったある日、こんなに人と関わる仕事だとは思いませんでした。知らない人と話すのが苦痛でもう耐えられません、と巫女長に泣きながら訴えて退職した子もいました。
　國學院卒で明階取得、更に舞も雅楽も作法もすごく上手な方もいましたが、巫女ではやはり満足出来なかったらしく１年目の年度末に無理矢理辞めて行きました。神道の知識があるから便利に使われるけど、高卒の新人と同じ待遇だから厭になったのかなあ。

　神社を退職した後に、新たな就職先で僕は鬱病になり、数日欠勤した後に退職になった。今思えば、退職後に鍵とか保険証持って来いと言われて、ヘロヘロの状態で行っては吐きそうだったけど、あれも郵送で送りつけておけば良かったと思っています。あの状態で無理矢理行くのは結構危険な事だった気がする。

　何で今、こんな辞め方について長々と回想しているのかというと、例の非常に役立たずなあのオバサンの退職日が明日らしいからです。給料の締め日である２０日か、遅くとも月末でサヨナラという話は聞いていましたが、どうやら明日が最終日らしいです。
　だから何かするとかは全くないのですが、今日になってふとおば様方が「本当に明日で終わりなの？」と疑問に思い出したからです。バイトとかではないので、退職するとなれば私物を持ち帰る以外にも色々やる事はあります。

①退職の手続き。殆ど人事の人がやりますけど、離職票とか多少本人がサインしたりするものもありますよね？

②自分の部署の人には前もって挨拶………というか退職します、って報告しませんかね？　この間クビ宣言して以来、周囲の誰一人オバサンからそういう話は聞いていないそうです。その働き振りが災いして仲が良い人が誰もいないのも原因かも知れませんけど、チーフにも誰にも直接報告なしです。当日いきなり言うのか、何も言わずにフツーに帰って行くのか。後者の様な気がしますね。
　今日の時点で誰にも報告、挨拶がないという事で、「普通言うでしょ？　信じられない」と呆れている方多数です。明日の朝礼で部長が言うのか、何も言わずにそのままサヨナラ、翌日になって「あ、あの人辞めたんだ？」と言われそうです。

　仕事も出来ない、コミュニケーション能力がない、独り言や鼻歌等周囲に迷惑な癖がある、気が利かないので雑用は全くやらないと問題点が多々ある人ですが、これに常識的な退職の報告、挨拶が全く出来ないが加わりました。
　仲がいいわけじゃないから、別に言わなくていいやと思ってるのかも知れませんが、その調子じゃ再就職は困難を極めるだろうなあと他人事ながら醒めた目で見ています。

　最終日の明日が楽しみです。最後だけど、誰か一発説教でもしてあげた方が、本人の為になりそうな気がします。年の近い方もいますので。