新人さん１人リタイア

　月曜日は１番憂鬱、って程でもない今日この頃。日差しも弱まり涼しい風を感じながら出勤。ふと見ると、いつの間にか新人さん（若い方）の席がうちの部署に移っている。土曜日に移動したらしい。まあいいや、今日も元気に朝のお掃除タ～イム！とがしがし机を拭いたり階段掃除したりしていると、１本の電話が。
　自分のデスクでメールチェックをしていた部長が出る。
　新人さん（若い方）からの電話で、用事があるから午前中は休むとのこと。ハローワークの手続きか何かだろうか？と思いつつも、不穏なものを感じる。
　
　仕事開始から１時間程して再び新人さん（若い方）から電話が掛かって来た。これは僕が出た。実は殆どこの人とは顔を合わせる機会もなく、名前も知らなかったりする。まともに声を聞いたのはこれが初めてだなあ、と話していると。社長に代わって欲しいと言う。
　めっちゃ不穏だ。
　ただ休むの何のだったら社長に代わる必要はない。社長に代わらないといけないとなると、ひょっとして………
　とりあえず僕の憶測などどうでも良い。社長がいるか確認した所、まだ出社していないということなので、あと１時間くらいで来るからもう１度その時間に掛けてもらうことにした。

　それから１時間後、また掛かって来た。
　出たのは先輩だった。そのまま社長に代わり、それなりに長めの電話だったのは、電話のランプで見て取れた。
　　
　一体どうなったのだろう。十中八九辞めるような気がしてしょうがないが、いちいちそんなことは伝えられないので分からない。どうしたんだろうね、午後来るのかな？と先輩達と昼ごはんを食べ、食後のお茶を飲んでいると、カンカンと力強く叩きつけられるヒールの音がした。
　ん？チーフ？　忘れ物でもした？　まだ来るのは早いんじゃない？　休憩時間はまだまだ残っているよ？
　ゆっくりと音の主を見てみると、新人さん（若い方）。
　しかもかなりご機嫌斜めというか不機嫌全開のご様子。
　彼女は自分のデスクに向かうと、私物をカバンにねじ込み、ここ数日でコピーしたであろう仕事の資料をビリビリと派手に引き裂き、ボスッ！とゴミ箱に投げ込んだ。
　一体何があったの？　どうしたの？　と思いつつ、立ち上る赤黒いオーラに気圧されて何も言えず、ただ無言で見つめる僕達。
　彼女は資料を全て破り捨てると、カバンを持って再びカンカンと足音を響かせて部屋を出て行った。

　………えーと、これはやっぱり辞めるってことですか？

　午後になってからやはり辞めたらしいという情報が伝わって来る。
　ナンバー２なのに情報がすぐに回ってこないことも少なくない部長が、３時のお茶を飲みながらぼやく。

部「新人さん辞めちゃったんだってさ。まだ１週間なのに。もうちょっと様子見てみても良いと思うんだけどねー」

僕「きっともう様子見るまでもなく無理だと思われたんじゃないですか？」

部「え～？　そうなのかなあ？　まだ１週間なのに？」

僕「そうなんですけど、今日来た時に資料をビリビリに引き裂いて行きましたよ。しかもすごく怒ってたように見えました。ほらこんな風に」

　手近にあったゴミ箱の中身を部長に見えるように傾けた。
　
部「………すごいな」

僕「前の部署で何かあったんじゃないですか？　ただ合わないってだけならこんなに引き裂いたり、怒ったりしないと思いますよ」

部「あそこは変な女が多いしな」

　一体何が原因で新人さんが辞めたのかは分かりませんが、よっぽど腹に据えかねる事があったんだろうと思われます。でも他の職場探す方がきっと幸せだと思う。
　それにしても退職理由が気になります。

　そんなドラマがあったのを忘れるように、巨峰を食べて紛らわせます。

　

　近所のスーパーで売っている１パック２００円のものです。この皿２杯分くらいあるので、まずは半分だけ頂きます。
　安さの秘密は房つきでない事。房から取れてしまった実をパックに盛り合わせたものなのです。見た目が良くないってことで安いようです。
　房なんて食べられないし、むしろ邪魔だから最初からなければ良いのに、と思っている僕にはピッタリ。しかも安い。いつもある訳じゃないし、そもそも数が少ないのですが、出会えたなら即買っています。
　美味～、でももっとアルコール発酵したのも良いなあ。

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